リベルサスの副作用 吐気の対処法
〜ぼやき〜
ネットでたまに、GLP-1は副作用の吐き気で痩せている危ない薬と揶揄されることがあります。
そもそも副作用とはなんでしょうか。
WHO(世界保健機関)の定義によれば、医薬品の副作用とは、「疾病の予防、診断、治療のた め、又は身体の機能を正常化するために、人に通常用いられる量で発現する医薬品の有害かつ意 図しない反応」としています。
セマグルチドの意図した効果とは、簡単にいうと糖尿病における血糖コントロールです。それに付随して胃運動抑制効果もあり体重減少効果が生じます。
つまり、体重減少効果は意図した反応と考えられます。
薬を作る際に製薬会社はなるべく人の体に負担のない薬を作ろうと考えます。初めから吐き気がでない薬を作るに越したことはないですが、そこをカバーできず有害事象として発現するのが吐き気などの「副作用」と考えます。
もちろんセマグルチドを服用している方でなかなか吐き気が改善しない方が継続して内服をすることで体重減少に至ったとしたらそれは吐き気で痩せていると言ってもいいかもしれません。
しかし、実際には長期的な吐き気はなく体重減少効果が得られている人が多いのも事実です。私個人として、副作用で痩せる薬とは思いません。
本編です。
セマグルチド(オゼンピック、リベルサスの主成分)の副作用は、特に内服を開始・再開したり用量を増やしたときに起こります。また、用量が多いほど副作用は出やすいと報告されています。
副作用のほとんどは軽度で、最も多い副作用は吐き気です。
ここまで解説してきたように、セマグルチドの効果は大きく分けて2つあります。
一つはホルモンの作用によって血糖値をコントロールする効果、もう一つは胃の運動を抑制する効果です。
薬を服用すると胃の運動が抑制され、消化管内の圧が上昇するために吐き気が出現します。
臨床試験では、これらの副作用のため、3~4%の人がオゼンピック治療を中止しています。
副作用
頻度の多い副作用(少なくとも 5% 程度)
- 嘔気
- 嘔吐
- 下痢
- 胃痛
- 便秘
- 低血糖(通常、インスリンも服用している患者)
頻度の低い副作用(5 %未満)
- 消化不良
- ゲップ
- 胃のむかつき(胃酸の逆流)
- 胃炎
- 倦怠感
- 味覚の変化
- めまい
- 胆石(リベルサス添付文書上は頻度不明)
- 膵炎(リベルサス添付文書上は頻度0.1%)
吐き気が続く期間
上記の理由で副作用として吐き気が出現します。臨床研究の結果では吐き気が必ずしも嘔吐につながったわけではなく、臨床試験中に嘔吐を経験した人は10%未満でした。しかし、現実では嘔吐までしてしまって不安になったり、困っている人はそれ以上にはいると思います。
実際にこの吐き気がいつまで続くのか、不安に思う人もいると思います。経験的には1~3日で吐き気が消失する人が多い印象です。
セマグルチドの服用を開始する場合、ゆっくりと用量を増やすことをおすすめします。これにより、体が薬に慣れ、胃腸の副作用の重篤度が軽減されます。
そして一定期間内服を継続すると、ほとんどの人で吐き気や嘔吐が改善する傾向にあります。
吐き気の対処法
- 一時的に休薬する・減薬する
嘔気が強く、生活に支障をきたすレベルであれば、一時的に服用を中止してください。通常はリベルサスであれば1日内服を中止するだけで血中から有効成分がほ消失するため吐き気が消失することが多いです。
逆に、リベルサス休薬後数日経っても嘔気・嘔吐が改善されない場合は薬剤性の腸管麻痺(麻痺性イレウス)が起きている可能性があります。特にその数日の間オナラや便が全くでない時は注意が必要です。すぐに処方したドクターに相談してください。
オゼンピックなど週1回投与のお薬の場合は有効成分の血中濃度が消失するまで5−7日程度かかりますので、その間薬の副作用による嘔気が継続する可能性があります。
また、抗精神薬や抗うつ薬を内服されている方は、それらの薬自体が腸管の動きを抑制してしまうことがありますので、セマグルチドの服用に伴う吐き気がある際の併用には注意が必要です。
いずれにせよ、副作用が強く心配なときは処方医に相談することが大事です。
- 食事の質を変える
高繊維質や高脂肪食品は消化が遅れて、症状を悪化させる可能性があります。吐き気が強い日には、豆腐やイモ類、ヨーグルトやひき肉、魚など繊維の少ない柔らかい食べ物をとることで改善が見込めます、
・水分を制限する
通常、吐いてしまった場合は脱水のリスクがあり水分摂取が推奨されます。しかし、セマグルチドによる吐き気は胃腸運動の抑制による消化管内圧の上昇に伴う副作用です。この場合、水分を普段より多く摂取するとどうなるでしょうか。
消化管内の圧力がさらに上昇し、嘔気が増悪する可能性が高いです。
つまり、セマグルチドの服用の副作用による嘔気に対しては普段以上の水分摂取は有効でないことが多く、むしろ逆効果である可能性すらあります。
また、耐えきれない程の吐き気がある場合は一時的に休薬をすることが症状を悪化させないためにも大事です。
Q &A
吐き気どめや市販の胃薬ってきくの?
病院で処方されるプリンペランなどの腸蠕動改善薬であれば、症状の改善は見込めます。また、パントテン酸製剤などビタミンB5に代表されるビタミンB群には腸管運動を促進する働きがあるため、胃腸運動が抑制された結果として起こる嘔気には効果的と考えられます。
市販の胃薬の多くは胃酸分泌を抑制する効果があります。セマグルチドの服用によって胃運動が抑制された場合、消化管内圧が上がってその結果分泌された胃酸が食道に逆流して嘔気や嘔吐、ゲップ症状が出現する方もいます。
一時的な症状軽減には効果的ですが、消化管内圧を下げるという直接的な効果はないため、根本的な解決に至らないこともあります。
要は、いずれも効く可能性はあるけど効果はまちまちというところです。
- 生姜茶を飲む
効果は不明ですが、海外の文献には書いてありました。気休め程度かもですが試してみてもいいかもしれません。
困った時は医師に相談を
吐き気がひどく、毎日の生活や十分な食事が困難な場合は、処方した医師に相談してください。吐き気止めを服用したり、服用方法や投与量を変更したりできる場合があります。
吐き気に激しい腹痛・背部痛などの他の症状が伴う場合は、膵炎や腸管麻痺、胆嚢疾患などの深刻な副作用を示している可能性があります。この症状が現れた場合は、直ちに医師の診察を受けてください。
医療広告に関して
国内承認薬ですが本国では現在適応外使用となります。
当院で処方している薬剤はいずれも全て国内正規卸より入荷しております。
アメリカでは既に肥満症薬と使用されており、後述の副作用説明記事にも記載の通り、現段階では大きな有害事象は確認されておりません。