マンジャロとピルの併用について
「マンジャロとピルって併用していいの?」
マンジャロと低用量ピルの併用について相談を受けることがあります。
結論としては、『併用はできるが、低用量ピルの効果が減弱する恐れがある』ということになっています。
リベルサスやオゼンピックをはじめとしたGLP1受容体作動薬やマンジャロのGIP/GLP1受容体作動薬の主な効果の一つとして、胃の内容物の排出を遅らせて満腹感を持続させる効果があります。 マンジャロはGLP-1およびGIP受容体作動薬の二重作用薬であり、その作用機序により一般的な従来のGLP1受容体作動薬よりも胃内容排出遅延効果が大きくなることが知られています。 オゼンピックやリベルサス等GLP1受容体作動薬の低用量ピルに対する影響については、5件の先行研究で経口ホルモン避妊薬に対する薬剤の影響は統計的または臨床的に有意な差は示されない=影響はないという結果が出ていました。 今回は経口避妊薬とマンジャロの併用に関する論文を紹介します。
「経口避妊薬に対するチルゼパチドとGLP1受容体作動薬の影響」という題の研究となっております。チルゼパチドはマンジャロの主成分を指しています。 論文が発表された2023年11月時点ではマンジャロと経口避妊薬に関する研究は1件しか出されておらず、その研究結果からマンジャロの製造会社「イーライリリー」の公式HPにて低用量ピルは併用注意と記載されております。
簡単に医療用語の解説をします。読み飛ばしても大丈夫です。
Cmax 最高血中濃度→薬物投与後の最大血中濃度
Tmax 最高血中濃度到達時間→最大濃度に達するまでの時間
AUC 血中濃度時間曲線下面積→これが大きいほど体の中で薬がたくさん利用されたと判断される
マンジャロを経口避妊薬と併用した場合、最高血中濃度、最高血中濃度到達時間、血中濃度時間曲線下面積が統計的に有意に減少した=効果が減弱したことを示しました。 このことから、マンジャロを使用している状況では経口避妊薬で得られる本来の効果を十分に発揮できない可能性が指摘されています。
低用量ピルはどのような体型でも効果が発揮できる用量として有効成分が決められており、効果が減弱することで避妊効果が全くなくなる可能性は低いと考えられます。
現時点では経口避妊薬とマンジャロの併用に関する研究はこの1つしかなく、信頼性としてはまだまだ低い状況ですが、1つの結果として出ているので十分参考にする価値はあると言えます。 今後の研究で血中濃度だけでなく避妊効果には全く影響がないと覆る可能性も十分にありますが、避妊効果に有意に影響するという結果が出される可能性もあります。 今後も研究が出てくるはずですので、論文が発表され次第随時配信していく予定です。
医療広告に関して
国内承認薬ですが本国では現在適応外使用となります。
当院で処方している薬剤はいずれも全て国内正規卸より入荷しております。
アメリカでは既に肥満症薬と使用されており、後述の副作用説明記事にも記載の通り、現段階では大きな有害事象は確認されておりません。