結局GLP1ダイエットって危険なの?③(糖尿病患者に関する研究編)

リベルサスが市場に出てくるまで、様々な臨床試験が行われました。
今回は、糖尿病患者に対する治療薬として開発されたセマグルチド(オゼンピックとリベルサスの主要成分)に関する研究をかなりざっくりまとめていきましょう。

目次

SUSTAINシリーズ (Semaglutide Unabated Sustainability in Treatment of Type 2 Diabetes)

成人2型糖尿病患者を対象としてオゼンピックを投与した場合と、既存の糖尿病薬やプラセボを投与した場合でHbA1c(糖尿病の数値)の低下率と体重の減少率を比較した研究です。

既存の糖尿病薬としてメディカルダイエットを行なっている人に馴染みが深そうな薬をあげると、カナグル、ジャヌビア、トルリシティ、ビクトゥーザ等の薬剤と1対1で真っ向から戦った研究結果をまとめた長編シリーズになります。

以下、簡単にまとめてみました。

シリーズ研究内容結果その他
SUSTAIN1セマグルチド1.0mg vs プラセボ
(オゼンピック)
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが有意に高かった有害事象の多くは軽度から中等度で、悪心が一番多かった
重症低血糖の発症はなかった
SUSTAIN2セマグルチド1.0mg vs シタグリプチン
(オゼンピック)  vs (ジャヌビア)
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが有意に高かった有害事象の多くは悪心や下痢だった
両群で低血糖が1-2%見られた
SUSTAIN3セマグルチド1.0mg vs エキセナチド2.0mg
(オゼンピック)  vs (ビデュリオン)
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが有意に高かった消化管の有害事象が対象群よりも多かった
SUSTAIN4コントロール不良の糖尿病患者の比較研究
セマグルチド1.0mg vs グラルギン
(オゼンピック)
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが有意に高かった低血糖の有害事象はグラルギン群で有意に多かった
有害事象の多くは悪心が多かった
SUSTAIN5インスリン投与中患者の比較研究
セマグルチド1.0mg vs プラセボ
(オゼンピック)
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが圧倒的に有意に高かった対照群と比較して低血糖の発生が有意に多かった
有害事象の多くは消化管障害だった
SUSTAIN6HbA1cや体重減少に関する研究ではないため割愛
SUSTAIN7コントロール不良の糖尿病患者の比較研究
セマグルチド1.0mg vs
 デュラグルチド0.5mg,0.75mg  (オゼンピック)  vs    (トルリシティ)
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが有意に高かった頻度の高い有害事象は消化管障害だった
SUSTAIN8コントロール不良の糖尿病患者の比較研究
セマグルチド1.0mg vs カナグリフロジン
(オゼンピック)  vs  (カナグル)
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが有意に高かった最も多い有害事象は消化管疾患で、そのうち悪心が一番多かった
SUSTAIN9SGLT2阻害薬投与中患者の比較研究
セマグルチド1.0mg vs プラセボ
(オゼンピック)
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが圧倒的に有意に高かった高血圧の改善や脂質異常症の改善が見られた
対照群と比較して消化管障害の有害事象が多かった
SUSTAIN10セマグルチド1.0mg vs リラグルチド1.2mg
(オゼンピック)  vs (ビクトゥーザ)
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが有意に高かった対照群と比較して消化管の有害事象が多かった

結果は全てオゼンピックの勝利となっています。
HbA1c低下、体重減少のいずれにおいても既存の糖尿病薬やプラセボよりオゼンピックが有意に作用すると示されたのです。

オゼンピックが糖尿病患者に対して血糖コントロールと体重減少の点で有効であることがわかりました。そうなると、今度はリベルサスの効果はどうなのか気になりますよね。

PIONEERシリーズ

成人2型糖尿病患者を対象としたリベルサスを投与した場合と、既存の糖尿病薬やプラセボを投与した場合でHbA1c(糖尿病の数値)の低下率と体重の減少率を比較した研究です。

こちらも簡単にまとめてみました。

シリーズ研究内容結果その他
PIONEER1経口セマグルチド(3mg,7mg,14mg) vs プラセボ
 (リベルサス)
いずれの用量でも有意にHbA1cの低下を認めた
7mg,14mgで有意に体重減少を認めた
対照群と比較して軽度から中等度の一過性の消化管イベントが多かった(嘔気、下痢など)
PIONEER2コントロール不良の糖尿病患者の比較研究
経口セマグルチド14mg(漸増) vs エンパグリフロジン
   (リベルサス)      vs (ジャディアンス)
有意にHbA1cの低下を認めた
長期投与(52週後)で有意に体重減少を認めた
対照群と比較して消化管の有害事象が多かった
PIONEER3メトホルミン投与中患者の比較研究
経口セマグルチド(3mg,7mg,14mg) vs シタグリプチン
     (リベルサス)     vs  (ジャヌビア)
7mg,14mgで有意にHbA1cの低下を認めた
7mg,14mgで有意に体重減少を認めた
長期投与(78週後)では3mg群でも有意に体重減少を認めた
PIONEER4メトホルミン投与中患者の比較研究
経口セマグルチド14mg(漸増) vs リラグルチド1.8mg
  (リベルサス)     vs (ビクトゥーザ)
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが有意に高かったプラセボ群と比較して消化管の有害事象が多かった
PIONEER5腎機能障害がある患者の比較研究
経口セマグルチド vs プラセボ
(リベルサス)
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが有意に高かった対照群と比較して軽度から中等度の消化管イベント(主に嘔気)が多かった
PIONEER6心血管リスクが高い患者の比較研究
経口セマグルチド vs プラセボ
(リベルサス)
                
心血管死・全死亡は有意に低下した
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが有意に高かった
プラセボ群と比較して消化管の有害事象が多かった
PIONEER7コントロール不良の糖尿病患者の比較研究
経口セマグルチド14mg(漸増) vs シタグリプチン100mg
   (リベルサス)     vs   (ジャヌビア)
              
HbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが有意に高かった嘔気が最も多い有害事象であった
PIONEER8インスリン投与中でコントロール不良の糖尿患者の比較研究
経口セマグルチド(3mg,7mg,14mg) vs プラセボ
   (リベルサス)
いずれの用量でもHbA1c低下率と体重減少率のいずれもセマグルチドが有意に高かったプラセボ群と比較して軽度から中等度の有害事象(吐気が最多)が多かった
PIONEER9日本人患者の比較研究
経口セマグルチド(3mg,7mg,14mg) vs リラグルチド0.9mg
    (リベルサス)      vs (ビクトゥーザ)
 
用量依存的にHbA1cの低下を認めた
HbA1c低下効果に有意差はほとんどなかった
14mg群で有意に体重減少を認めた
有害事象で軽度から中等度の消化管イベントがリラグルチド群で最も多かった
セマグルチド群も便秘が最多であった
PIONEER10日本人患者の比較研究
経口セマグルチド(3mg,7mg,14mg) vs デュラグルチド0.75mg
    (リベルサス)       (トルリシティ)
長期投与で14mg群で有意にHbA1cが低下した
長期投与で有意に7mg14mg群で体重減少を認めた
セマグルチド群では用量依存的に有害事象が増加した
消化管イベントは継承かつ一過性の便秘と嘔気が最多だった

ほとんどの試験でHbA1c低下、体重減少のいずれにおいても既存の糖尿病薬やプラセボよりリベルサスが劣らず、むしろ有意に作用することが示されました。リベルサスは用量依存的に作用するので、7mg,14mgでは特に有意に効果が認められたようです。

また、ほとんど全ての研究でセマグルチドの有害事象として嘔気や便秘症状が挙げられました。いずれも軽度から中等度の胃腸障害と判断されていて、長期的に内服することで症状は軽減することもわかっています。

(副作用についてはこちらのページで解説します ⇨リベルサスの副作用、吐気の対処法

とりあえず、ここまでの研究結果から糖尿病患者に対してセマグルチドがかなり有効だという結果となりました。では、糖尿病を持たない患者に対する安全性は確保されているのでしょうか?

次回は糖尿病患者でない肥満患者に対する研究を紹介します。
結局GLP1ダイエットって危険なの?④(健康な人が飲んだら…編)

SUSTAINシリーズ、PIONEERシリーズの原文はこちらから

・前の記事

結局GLP1ダイエットって危険なの?①(薬の説明編)

結局GLP1ダイエットって危険なの?②(リベルサス誕生秘話編)

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結局GLP1ダイエットって危険なの?④(健康な人が飲んだら…編)

結局GLP1ダイエットって危険なの?⑤(結論編)

・参考 読み物

リベルサスの副作用 吐き気の対処法

リベルサスが効かない時(リベルサスの効果的な服用方法)

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